以下、ネタバレがあるので、まだ読んでいない方はご注意ください。
色々と物議を醸していた進撃の巨人の世界観は21巻で明らかになったわけですが、22巻を読むと、その歴史が何かと酷似している事に気付いた方もいると思います。
かつてエルディアに占領されていたマーレは、彼らは自分達を虐げただけだと主張し、力関係が逆転した今、エルディアを声高に罵る。
一方でエルディアの末裔は、自分達の祖先はマーレを含む大陸の人々を豊かにしたのに、恩を仇で返す野蛮人どもが! と罵る。
決して相容れる事の無いお互いの歴史観。
どこかで聞いた話ですよね。
そう、これは明らかに今の日本と中国&韓国を象徴しています。
そして争いに疲れたエルディアの王は島へと逃れ、3重の壁を築いて不戦を誓う。
エルディア=日本とするならば、エルディアを守る三重の壁は憲法9条であり、また島国特有の日本人の心の壁でしょう。
法的にも精神的にも強固な壁を作ることで、戦後100年近く平和を享受してきたものの、それは幻想の壁に過ぎなかった…。
グリシャの「俺は本当の歴史を知っている!」という思い込みが、自分に都合の良い歴史しか信じない保守派に対する痛烈な皮肉であるならば、壁と言う幻想の平和に依存して慢心しているエルディア人は、平和念仏主義を唱える現代の多くの日本人なわけです。
しかしいくら不戦を唱えても、平和は崩れる時は簡単に崩れてしまう。
エルディア人にもう戦う気がなくとも、支配されていた側はその恨みや、何より恐怖を簡単に拭うことはできない。
また奴らは我々を支配するのでは? という疑念と恐怖が、自分たちが安心して生きていくためには相手を滅ぼさなければという結論に繋がっていくのです。
ましてや支配していた側が「俺たちは正しい事をしたんだ!」などと言えばなおさら。
結局、戦いはお互いを理解する努力を怠った末に起こる最悪の愚行というのが、エルディアとマーレの歴史であり、現代の日本とアジア諸国に対する警鐘なのかもしれません。
また、それでも戦わなければならなくなった時、人はどう戦うべきなのか?
というのも作品のメインテーマの一つでしょう。
この物語がこの後どういう展開をして、どういう結末を迎えるのか? とても興味深いです。